“より主体性を持って「どんな価値を提供するのか」を最初から考えるようになったので、さらに多様な価値が生まれるようになっている気がします。”

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三菱電機株式会社 デザイン研究所 飯澤様へのインタビュー

Q. IDEOと協働するに至った背景について教えてください。

初めてIDEOとのプロジェクトを経験したのは2014年。当時、社内でもイノベーションを推進する動きが活発になっており、私の所属する開発本部のなかでも、いかに既成概念を取り払って新たな商品・サービスの開発を進めるか、ということが課題でした。

私は2007年にスタンフォード大学でコンピューター科学/心理学の研究室でリサーチャーとして働いた経験があり、その頃IDEOやd.schoolのことを知り、いつか一緒に何かやってみたいと思っていました。2年前、社内でオープンイノベーションをやりましょう、という話になった時、私がIDEOと協働することを提案しました。

Q. これまでどのようなテーマでコラボレーションされたのでしょうか。

最初のテーマは、「未来のスマートホームリビングを考える」というものでした。IDEOとの関係は長い目で見ていたので、初回はワークショップからスタートし、デザイン部門に所属する社員にIDEOのアプローチに触れてもらうことが目的でした。ここでは具体的に3つのIoTサービスのアイデアが生まれました。昨年度は、より領域を広げて、「将来の街において三菱電機は何ができるか」という、事業の方向性について共にコンセプトを創るプロジェクトをお願いしました。

Q. IDEOとのプロジェクトは、組織の考え方やものづくりのプロセスにどのような影響がありましたか?

製品開発は、どうしてもそのプロセスが以前やったことの繰り返しになりがちです。IDEOとの協働の成果は、既成概念や今まで通りの開発プロセスからどう抜け出すか、ということを考え、ユーザーに提供する価値が技術とどう繋がるか、という視点に立ってものづくりをするという共通認識を、社内で持てたことではないでしょうか。そしていままで以上に、より主体性を持って「どんな価値を提供するのか」を最初から考えるようになったので、さらに多様なアイデアが生まれるようになっている気がします。

先日は我々デザイン研究所が、デザイン思考のアプローチを社長、会長、取締役に向けてプレゼンする機会もあり、全社的に受け入れられつつあるなかで、若手による新プロジェクトなども立ち上がってきて、活気づいています。

Q. Little Book of IDEOに書かれている、”Seven Values”(7つの価値観)*に共感されたとのことでしたが、日本企業の風土と照らして、お感じになることはどのようなことでしょうか。

あの本に書かれていたことは、実は目新しいことではないはずなのですが、日本の企業にとっては難しいことばかりなのかなと感じています。

特に重要だと感じるのは、”Make others successful”(仲間の成長・成功を助けよう)でしょうか。正直、日本ではまだ本音と建前で物事を考えてしまう側面もあると思いますし、そもそも社会のシステムや評価軸が異なるので、企業内、企業同士でこういった助け合いの精神を持つことの価値を理解し、実践するのはチャレンジですよね。これからグローバルに展開していこうと思った時に、個人レベルもそうですが、会社同士が支え合い、助け合って、みんなで成功していく、というのはいっそう大事になっていくと思います。

あとは、”Take ownership”(何事も自分ごと化する)も課題だと感じます。会社では、新しいことをやろうとしたとき、どうしても「できるかできないか」の話になりがちです。でも大切なのは結局、自分がどこまでやるのか、そのためにどこまでリスクをとるのか、という話なんですよね。

子どもの頃から私たちが受けてきた教育を考えると、一人一人の考え方や価値観は、一朝一夕で変えられるものではないと思います。ただ、「行動」を変えることはできる。IDEOとのプロジェクトを通じて学んだ、イノベーションを生むための働き方、コラボレーションの仕方、アイデアの共有や集約の方法を、組織として取り入れれば、少しずつ変わっていくのではないかと期待しています。

Q. 日本は世界で一番クリエイティブと評価される一方、日本人は自らの創造力に関して自己評価が低いというリサーチ結果*がありますが、これについて日本の作り手としてどのようなお考えをお持ちですか。

日本にも、クリエイティブなアイデアはそこらじゅうにたくさんありますし、誰でもアイデアを出せると思います。ただ、そのなかから何を選ぶか、何を形にするか、ということが重要なのではないでしょうか。日本に足りないのは、「クリエイティブな”アイデア”」ではなく、「クリエイティブな”意思決定”」のような気がします。アイデアが面白いか、面白くないかは、見方だけの問題で、同じものでも、見方を変えれば面白くなる。新しいアイデアが生まれたときに、それを面白いビジネスまでもっていくために創造力が必要で、そのためには組織のなかに多様な視点と柔軟性が求められると思います。

Q. 今後、IDEOにどのようなことを期待されますか。

私たちは今後、特にIoTを使ったサービス/ビジネスにおいて、社会に対して新たな価値を提供したいと思っています。品質や精度に関しては、徹底したこだわりと技術力を誇っていますが、そのために足りないことがたくさんあります。たとえば社外とのコネクションや、課題に対する新しいアプローチ、アイデアを魅力的な形に具現化していく方法。そういった外に開かれた可能性のようなものを、IDEOには期待しています。コラボレーションを通じて、今まで自分たちだけではできなかったことにチャレンジしたいですね。そして、我々自身が「三菱電機はクリエイティブな会社である」と自信を持てるようになったら、と思います。



ご協力:

三菱電機株式会社 デザイン研究所 インターフェースデザイン部 インターフェース第2グループマネージャー  飯澤 大介 様