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“お客さんの意識や体験を変えるために必要なことは何なのかを考えるようになり、ものづくりも、マーケティングも、宣伝広告のやり方も変わっていった。”

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株式会社 明治 商品開発に関わる皆様へのインタビュー

Q: IDEOとの協働を経て、今どんなことを感じられていますか。

平片氏:「モノ価値」から「コト価値」に変わってきた、と言われて久しいなか、当時我々は、やはり良い商品を作って、マス向けに大きく広告宣伝を打ち、大量に売る、という「モノありき」の考え方から抜け出せない状態にありました。危機感はあったものの、何をどう変えたらいいか、わからなかった。

でも、IDEOとのコラボレーションを通じて、まず自分たち自身のマインドセットが変わり、上司たちが変わり、最終的には社長も理解してくれて、一気に会社全体の風向きが変わった。社内に、チョコレートのイノベーション戦略を中長期的に考える部署まで立ち上がりました。1年前からは考えられないような場所に、組織として行き着いたと思います。

Q: 当初、どのような課題をお持ちだったのでしょうか。

山下氏:あるプレミアム商品を、どうしたら日本市場に定着させられるか、というご相談をしようと思っていました。その背景として、伝統的な定番商品である「明治ミルクチョコレート」は、もう消費者にとってただ安い商品でしかない、これを打開するために、プレミアム商品を市場に投入しよう、という発想がありました。

ところが石川さん(石川 俊祐・IDEO デザインディレクター)にこのお題をお伝えした際、「チョコレートで何ができたらうれしいですか?」と問われたのです。「明治のチョコレートって、もっと価値があるはず。この商品をどう売るか、よりも、チョコレートの体験自体を変える方法を考えた方が、面白くないですか?」と言われて、ハッとしました。商品担当としては、どうしても商品そのものだけに意識がいきがちです。発想の違いを感じました。

Q: IDEOとのプロジェクトがスタートし、どんな変化が生まれましたか。

佐藤氏:明治はそれまで、すべてがモノ起点でした。組織が縦割りで、私が所属するマーケティング部は、出来上がったものをどうお客さんに伝えていくか、のみに囚われていた。でも、IDEOとのプロジェクトがスタートし、だんだんモノから離れていったんです。お客さんの意識や体験を変えるために必要なことは何なのかを考えるようになり、ものづくりも、マーケティングも、宣伝広告のやり方も変わっていきました。

これまでは、消費者調査も、どこかモノに繋がる調査しかしていませんでした。でもこのプロジェクトを通じて、まったく違うアプローチを知り、文化的なところも含めてユーザーの潜在意識の部分を探る方法を学びました。自社の商品を新たな視点から見ることの面白さも知りました。

Q: 変化が起きて、よかったと思うことは。

山下氏:IDEOとの協働を通じて自分自身や組織に変化が生まれたことで、仕事が面白くなりました。

佐藤氏: 以前は、「日本のチョコレート文化をもっと高めたい」なんて、思っていても言えなかった。それがどう数字に繋がるの?という話になってしまう。やりたいことをやるために、ものすごい量の説得材料を準備しなければならなくて、苦労していました。

でも、「こんなことやってみたい」という姿勢を、上の人も後押しする環境になってきた。現場は楽しいから、どんどん新しいアイデアを出すようになる。もちろん、達成しなければいけない数字的目標もあるので、本質的に大切な価値との折り合いをどうつけていくかは、今も試行錯誤しています。でも、プロジェクトを経て、だいぶ周囲に納得してもらいやすい環境ができたと思います。

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Q: IDEOのどのようなアプローチが、変化につながったと思いますか?

佐藤氏:IDEOの人達は、思いつきの話や、変わった発想を一切否定しないのが印象的でした。そのアプローチは、彼らのユニークなリサーチ方法にも表れていました。

通常私たちが自社で行う市場リサーチはマス調査なので、定量化、定性化を繰り返すうちにデータが平均化されていきます。とんがったキーワードなどは社内で信用されにくかった。でもIDEOは、エクストリームユーザーにもインタビューし、インサイトを噛み砕いて、ストーリーにしていく。その力がすごいと思いました。今も、その時印象に残ったユーザーの言葉などはいろんな議論で使わせてもらっているんですが、何より、突飛な視点やアイデアを出すことを、恐れなくなりました。

社内で突飛なアイデアを共有したときに、「いいね!」と乗っかってくれる人が増え、これが重なってチームの力となり、前に進んでいけるようになったんです。

山下氏:0→1を提案する会社であるIDEOが、ものづくりの会社がもっとも苦労する0→1の難しさに共感してくれたことが、嬉しかった。今までは、全部一人で答えを出さなきゃいけない、と悩んでいました。でも、全部自分でわかりきらなくていいんだ、チームで「確からしさ」を積み重ねていけば、最終的に答えが見えて来るんだと、実感したんです。

IDEO Tokyoのオフィスには、世界中から集まった多様なバックグラウンドの人材がいるので、そういう人たちが私たちのチームに加わり、全然違う発想を持ち込んでくれたことは、とても面白かったです。日本だと、明治はすでにある程度知名度があるので、バイアスがかかったところからスタートする。でも、IDEOには、うちの商品を全然知らない人もいたので(笑)、まったく新しい視点が得られました。

Q: リサーチの一環でサンフランシスコオフィスにも行かれたと思いますが、いかがでしたか。

井田氏:普段と違うプロジェクトに関わるIDEOの人たちと話したり、フードサイエンティストとディスカッションするのは、とても刺激的でした。サンフランシスコで最先端の食文化に触れる機会をもらい、新たな視点を得ました。普段ヨーロッパに視察に行ったりもするのですが、自分たちで調べられる範囲のパティスリーやショップを回る程度しかできなかったので、非常に新鮮でした。また、リサーチに行ったら、戻ってきてすぐアイデアを出し合い、プロトタイプを始める、そういうスピード感を体感できたのも、とてもよかったです。

Q: IDEOとのコラボレーションの最大の成果は何だと思われますか。

平片氏:もともと、IDEOは我々組織の価値観を変えるスイッチを押してくれるかもしれない、そんな期待があってお願いしました。日本のチョコレート市場が変わっていくというムーブメントを感じ、どうにかしなきゃと焦っていたタイミングでIDEOに出会い、その活動が触媒となって、じゃあこうしよう、という意志につながっていった。

そして、この協働プロジェクトが起点となって、部長、課長を巻き込んで議論し、それがトップに届いて、組織全体の方針として降りてくる、そんなミラクルを1年で体験できました。具体的な形に落とし込むのも、お客さんに伝えるのもまだこれからですが、その前段階として我々自身が、個人レベルでも組織としても変わることができた。それを実感できたことが、大きな成果だったと思います。



ご協力:

株式会社明治
菓子営業本部 菓子商品開発部 山下舞子 様
菓子マーケティング部 専任課長 佐藤政宏 様
菓子企画部 企画グループ長 平片正憲 
コミュニケーション本部 デザイン企画部 アートディレクター 井田紀美子 様